生命は一体その3
【明治から大正にかけて活動されたお坊さんの文章を紹介しています】
有核生物と為れば核は遺伝の決定素にて、芽胞を構造したりまた成長させ、また細胞活動の連鎖をなせる故に、核は生命の住処である。核の外部はただ生命を扶助する外胞にて、保護の機関に過ぎぬ。生命は核に有るので、分殖するは核が二個に分かるる訳である。然(しか)る時は両方共に外包が出来るのである。
然(しか)して雌雄両性と別るるように成っては、核もまた多数となりて各分業的に掌(つかさど)る処が定まる。生殖を掌る雌(し)と雄(ゆう)との両方の核が、相合(あいがっ)して始めて一個の生命となる。それが即ち父母の間に成りたる子である。核は親の遺伝決定素を有(もっ)ている。而してその子に伝ふ。そうすると子もまた親と同じく、外包に保護せられて核の生命を保存す。生命の坐所なる核は肉体を離れても、子孫に分かれて同一の生命を存続する。親に宿れる生命が、元形質の核を以って子となり、この核が長久の生命にて外包は幾億に替われども、核の生命は永久に存続し、有目的の如くに生物が進化す。原始生物の元形質に伏蔵する性能は、代々に進化の務めを以って居るように感じらるる。親の徳性は核中に含蔵して、之を子に遺伝し核に有(も)てる丈に、外包の身体は構成せらる。
人類に至っては核細胞中に種々雑多に嵌込(はめこみ)式に含蔵して、精子卵子の合体が胎児と成り種々の嵌め込みから、芽発し始め原始生物の虫的の形から、また芽が出で茎から枝と云うように、細胞の分裂の位が階級的に各々(おのおの)特殊的に引き出されて、五体五官等の一定の部分と為り、親の生命及び外包が子と成り、その本は一体の分身にしてこの分身作用からして、世界中に弥漫(びまん)して幾億万と成ったのである。
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